2014年01月15日

『オオカミの護符』小倉 美惠子



心が洗われる様な素晴らしい本でした。

著者は都市化されていく中で、前時代に取り残されたかのような旧家で育ったことに劣等感を持ちつつ幼少時代を過ごしますが、大人になってから自分を育ててくれた祖父母の暮らしが、実はとても貴重な暮らし方であったのではないかと気付きます。

それを気付かせてくれたのが、土蔵に張られていた一枚の護符でした。古くからその土地に暮らす人々は、その護符を「オイヌさま」と呼びます。

護符には「武蔵國 大口真神 御嶽山」という文字と共に、黒いオオカミの様な絵が版画として刷られています。

この護符は何を意味するのか、何から守ってくれているのか、そしてどこからやってきたのか。

著者はこの一枚の護符のルーツを辿る旅に出ます。

その旅で出会った人々や風習、伝統、営み、信仰に触れるにつれて、平野部の人々と山間部の人々との古くからの絆を知ります。

また、平野部の暮らしが山間部の自然と密接な関係を持っていたことも知ることになります。

そして「オイヌさま」を崇める行為が、実にいにしえからの人の暮らしを支えてきた豊かな自然に対する畏敬と畏怖と感謝の表れであることを知ることになります。

一枚の護符から、思わぬ広域にわたるフィールドワークとなり、人と自然の美しい調和が保たれていた時代への旅となります。

淡々とはしていますが、丁寧な文章で、著者の体験が綴られています。読み進める内に、自分まで山の清涼な冷気や湿度を感じさせてくれる文章です。

私は根無し草で、思い入れがある土地があるわけでもありませんし、都市型の生活様式でなければ生きていけない人間ですが、本書に描写された古く土地に根ざした暮らしぶりは、何故か懐かしく感じました。

後書きを読む頃には、涙が出そうな程、清らかな心持ちになっている自分に驚いたものです。

都市型生活に疲れた人、日々の生活がなにか地に足が付かない感じの人、大切なものを忘れたまま大人になってしまったと感じている人、日本人であることに誇りを持てなくなった人、そんな人達には是非読んで欲しい本です。

posted by しげぞう at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月10日

『インフェルノ (上)(下) 』ダン・ブラウン












ダン・ブラウン氏の作品は必ず読む様にしておりますが、まず結論から述べますと、大変に面白かったです。

Amazonのレビューでは、期待はずれだったとか、ダンテの『神曲』は関係ないだろう、あるいは人口増加に対する対処方法が乱暴だろう、などといった批判が多いですが、やはりこれらはダン・ブラウン氏に対する期待が過剰であるためだと思われます。(実際、皆さん読んでいるわけですし)

正直、私にとっては前作の『ロスト・シンボル』の方が期待外れでした。こちらの作品は、映画の脚本としては優れていますが、小説としては今ひとつです。やはりダン・ブラウン氏は米国から飛び出した舞台でないと面白く無いのでしょうか。

ところが今作の『インフェルノ』は、こちらも確かに映画化を意識しすぎた作品にはなっているようですが、十分エンターテインメント小説として楽しめます。

ただ、事件の前提となっている人口増加問題には疑問があります。世界の頂点に立つような知性が予想しているような限りない人口増加はあり得るのでしょうか。先進国では減少しています。

ただ、そんな化学的な信憑性など、エンターテインメント小説で突っ込むのは野暮というものでしょう。

とにかく伏線の多さ、騙し合い、危機と脱出の波状攻撃は、ダン・ブラウン氏の真骨頂として存分に発揮されていました。とにかくスピード感が素晴らしいです。

そして結末(ネタバレになるので書きませんが)がまた、全く予想外で、心地よい裏切りに遭いました。

本作は、観光名所を駆け巡りますので、映画化も楽しみです。噂では『ロスト・シンボル』より先に映画化されるとのこと。まさか『ロスト・シンボル』の映画化は、フリーメイソンに妨害されているとか?

さて、今回の『インフェルノ』を読むに辺り、事前に『謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』』(村松 真理子著)を読んでおいた成果ですが、ずばり効果がありました。

『インフェルノ』は、ダンテの『神曲』に関する知識が無くても楽しめるように書かれていますが、『神曲』に関する知識があると、間違いなくさらに楽しめます。

ですから、『謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』』の必要はありませんが、ダンテや『神曲』についての予備知識をいずれかの本で先に仕込んでから『インフェルノ』を読まれると、一層楽しめます。

ああ、映画化が待ち遠しい。


posted by しげぞう at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月06日

『隣の陰陽師 弐──怨念の共鳴』

今回は電子書籍のセルフパブリッシングの紹介です。

拙著『隣の陰陽師』シリーズ第二弾が出ましたのでおしらせします。

第二弾は『隣の陰陽師 弐──怨念の共鳴』です。



以下はAmazonに掲載している紹介文より。

────
憑きもの落としに失敗した流雲は、次に憑かれた人物を探す。
その後、都内では幼女が続けて事故死するという事件が発生する。
その頃、傀儡女(くぐつめ)の取材を行っていたライターの小栗護の元に、連続幼児事故死事件にはマスコミに発表されていない共通点があることが知らされる。
その共通点について、小栗護から相談を受けた陰陽師の豊川猛が探り当てた人物は、意外な人物だった。
やがて憑きものを追う流雲と、幼児の事故死の真相を追う豊川猛がたどり着いたのは…。

本作では、前作『隣の陰陽師──懸想橋の約束』では姿を見せなかった402号室の住人が登場し、活躍します。
────

前作で、読者の方から電子書籍で読むには(特にスマホで)長すぎる、との声をいただきましたので、今回は短めになっています。

本作だけお読みいただけるように話は完結させておりますが、前作から読んでいただくと、登場人物たちの関係がより楽しんでいただけると思います。

前作は『隣の陰陽師──懸想橋の約束』です。




よろしくお願いします。


posted by しげぞう at 10:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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