2015年01月21日

『夢をかなえるゾウ』水野敬也



本書は発売と同時に爆発的に売れた本でしたが、テレビドラマ化されたものを先に見てしまったこともあり、読んでいませんでした。

しかし、たまたまKindleストアで399円の電子書籍となっていることを知ったため、安いと思い購入してみました。

読んでみると、古田新太がガネーシャを演じ、主演の駄目サラリーマンを小栗旬が演じたテレビ版が、実はかなり原作に忠実だったことを知り驚きました。

テレビ番組は笑いを取るためにかなり脚色されているのかと思っていたのですが、原作自体が非常に笑えるコミカルな作品だったのです。

そのため、読みやすく、疲れること無く一気に読み終えてしまいます。

本書は自己啓発書でありながらも、物語仕立てとなっています。

つまり、一人の平凡以下のサラリーマンが、ガネーシャのアドバイスを受けているうちに人間として成長していくというストーリーです。

書かれている自己啓発の内容は、割合に平凡でありふれていると言っても良い陳腐なものですが、それを笑える物語の形で解説しているところが、秀逸です。

とにかく、説教じみて退屈してしまいそうな自己啓発のアドバイスを、読者を飽きさせること無く、笑わせながらも納得させていく巧みさに敬服しました。

また、実在の著名人や歴史上の人物の逸話などが、ガネーシャのコミカルな語り口調で非常に巧みに引用されているところも感心しました。

今の生き方に疑問を感じている読者にとっては、夢と戒めと、激励を与えてくれる、エンターテインメント化された自己啓発書として、良くできた本だと思います。

最後は、目頭が熱くなるほど感動しました。ベストセラーであることに納得しました。


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2015年01月18日

『創価学会と平和主義』佐藤 優



「創価学会」と聞くだけで、胡散臭いと決めつけ避けて通る人は多いのではないでしょうか。

私は特定の宗教団体に属していないことを先に宣言しておきますが、やはり池田大作のアップの写真をみてしまうと、どん引きしてしまいます。

それでも創価学会を基板とする公明党が政権与党にある以上、この団体が国家運営に強い影響力をもっていることは事実で有り、それはすなわち基板団体の創価学会が日本の国家運営に影響をもっていることを示しているでしょう。

しかし私たちは、それほど重要な立ち位置にある創価学会について余りに知らないですし、知らないようにしているとも思われます。

そこに良きガイドブックが登場しました。佐藤優氏が徹底的に公開情報を読み解いて記した本書です。

佐藤氏は常に、公開情報の重要性を主張していますが、本書でもまた、公開情報からいかに多くの情報を読み取れるか、ということを実証してみせてくれます。

ただし、公開情報の分析は、かなり高度な技能とセンスが必要で有ると思っていますので、いくら佐藤氏が公開情報が大事だと主張していても、当方にとっては、やはり佐藤氏の様な人が分析した結果を読むのが(安直ですが)手っとり早いわけです。

さて、7月に閣議決定された集団的自衛権行使の容認について、マスコミの多くが連立与党で有る公明党が党是とする「平和の党」を貫けなかったと批判しました。

しかし、と著者は反論します。公明党こそ、集団的自衛権を骨抜きにした本当の平和主義を貫いたのだと。

集団的自衛権を骨抜きにしたことの是非を語るのが本書の目的ではありません。

本書は、この閣議決定で公明党が果たした役割から、創価学会の力量と、徹底した平和主義を探り、政教分離とは何か、といった問題にまで食い込んでいきます。

そして徹底した公開情報の分析から、創価学会が世界宗教として成長を続けていることを見抜きます。

佐藤氏自身はカルバン派のプロテスタントであり、キリスト教徒です。

そのことが、世界宗教へと発展したキリスト教と比較することで、宗教としての創価学会が目指しているところを見抜く洞察力となっているようです。

創価学会恐るべし。と同時に、創価学会に学ぶことの重要性を、佐藤氏は本書で語っているのだと思います。

創価学会や公明党をアレルギー反応的に避けている人にこそ、本書を薦めます。


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2015年01月12日

『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高 義樹



私は常々違和感を覚えてきたことがあります。広島平和都市記念碑
(原爆死没者慰霊碑)に刻まれた「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という文言です。

この言葉には主語がありません。

確かにさっさと降伏すべき状況になっても降伏しなかった軍部の行動は誤りではあります。また、資源力、経済力においても勝てる見込みがない国に宣戦布告(しかもタイミングがずれた)したことも誤りでしょう。

また、日本が有利な和平交渉を行えるタイミングを逃したことも誤りでしょう。

しかし最も大きな過ちを犯したのは米国では無かったのでしょうか? 彼の国は日本に原爆を落とす必要があったのでしょうか? 謝罪すべきは誰なのでしょうか?

そんな疑問を抱き続けておりましたから、書店で本書を見つけた私は迷わず購入しました。

見た目はチープなデザインの文庫本ですが、大変読み応えのある本でした。

Amazonのレビューでは、本書中の小さな誤りが幾つか指摘されていますが、いずれも瑣末な事でしょう(B-29に50mm機関砲が載せられたや、ドゥーリトル隊の使用機は4発のB-24ではなく双発中型のB-25など)。

問題は、なぜ、ナチスが存在したドイツではなく、日本に原爆が投下されたのか、あるいはなぜ、もはや戦争継続能力を失っていた日本がまもなく降伏すると分かっていながら、完成したばかりの原爆を慌てて日本に投下したのか、ということです。

また、軍部の主立った人達が原爆投下を軍事的に不要であると反対したにもかかわらず、投下されたのはどのような人達の意向だったのでしょうか。

著者の日高氏は、これらの問題を、丹念な情報収集とインタビューで解明していきます。

その結果、私たちが目を背けてきた冷酷な事実が浮かび上がってきます。その結論は、実が誰もがうすうす感じていながらも、敢えて考えないようにしてきたことかもしれません。

さらに後半、著者の目は現在の国際情勢と日本の防衛に目が向けられます。

原爆が投下されたことで、戦争が起きないことを「祈っている」だけで良いのか、と著者は懸念します。そういえば故小室直樹先生も、日本の平和主義者は思考停止した念仏主義者だというようなことをおっしゃっていました。

現在の日本は、平和ボケした人々の祈りとは逆に、またしても原爆を投下されてしまう可能性が高まっているからです。

これもまた、人々が目を背けている事実です。

再び日本に原爆が落とされないためにどうすれば良いのか、著者が示した方向性は、非常に同感できる内容でした。(ネタバレになるので書きませんが)

平和を願っている人にこそ、この手の本を勧めたいと思います。


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2015年01月11日

『日本人の99%が知らない戦後洗脳史 嘘で塗固められたレジーム』苫米地 英人



少々乱暴ではありますが、本書のメッセージを一言で表すとすれば、「現在の日本のあり方は、敗戦国であるということを再認識すれば理解出来る」とい言うことでしょうか(間違っているかもしれませんが)。

まずは、日本が敗戦国になったとき、戦勝国によって何が行われたのかを知らなくてはならないと本書は主張しています。

本書には、歴史の教科書では触れられていない驚くべき歴史認識が書かれています。簡単に紹介すると以下の様な事柄です。

・敗戦時の日本には、アジア全域から貴金属が集められていた。

・天皇家が戦争関連株で巨額の富を得ていたことを、GHQは「天皇はマネーギャングだ」と呼んでいた。

・教科書では財閥が解体されたと教えられる。それならば現在ある巨大企業が三菱、三井、住友の名の下に存在しているのは何故か?

・天皇家の財産は敗戦時、緊密な関係にあった赤十字を経由してBISに流れていた。

・当時の米軍のトップの経歴を洗うと、皆ウォール街出身である。これは何を意味するか?

・米国でも違憲判決が出されていた累進課税を日本に導入した理由は何か?

・NHKの生みの親がGHQであることは何を意味しているか?

・通商産業省を設立した立役者はドッジだったことの意味は?

・経済企画庁の前身はGHQの民政局であるGSが、ある意図を持って設立していた。

・東京地検特捜部もGSが、ある意図を持って設立していた。

さて、以上は本書で扱っているテーマの一部ですが、これだけ見ても、いかに日本が敗戦国であることを忘れているかということを痛感させてくれるのではないでしょうか。

さて、苫米地氏が最後の方で、日本が国連を脱退すべきであるという、驚いたことに私と同じ意見を主張されます。

しかしそれからどうするか、という部分が苫米地流です。これについてはネタバレになってしまいますので、伏せておきます。

現在の日本に皆さんがうすうす感じている歪みの原因について、もしかしたら本書を読むことですっきりするかもしれません。

まさに、戦後は「洗脳史」だからです。


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2015年01月07日

『魔女狩り 西欧の三つの近代化』黒川 正剛



魔女狩りについて、非常に良くまとめられた良書です。

猟奇的な内容では無く、魔女狩りがなぜ、伝説や伝承にどっぷり浸かっていた中世では無く、近代黎明期のルネサンスの後のバロック時代に猖獗を極めたのか、という点に注目して書かれています。

しかし魔女狩りについて全く知識の無い読者も想定しているようで、まずは魔女狩りがどの辺りからどのような流れで発生したのか、ということから丁寧に説明されています。

いや、魔女狩りについて知っている読者にとっても、魔女狩りの伏線としてのカタリ派や異端審問、ユダヤ教徒やワルド派に対する偏見などについては、あまり知られていないかもしれません。

第一章では魔女狩りが始まるまでの伏線的時代背景について解説され、第二章で魔女狩りが始まった際に、ヨーロッパでどのようにして魔女像が共有されていったかについて説明されます。

第三章では、魔女狩りが猖獗を極めたバロック時代の魔女や女性に対する偏見が浮き彫りにされます。

そして第四章で魔女狩りがどのように終焉を迎え、ヨーロッパが近代化を始めたかが語られます。

本書の特筆すべき部分は、魔女狩りの始まりから終わりまでを俯瞰するについて、三つの視点から解釈を試みているところです。

3つの視点とは、「視覚を中心とする感覚の近代化」「自然認識の変容と近代化」「他者・社会的周縁者の排除と近代化」です。

特に視覚による魔女の物語が言説化し、ヨーロッパの人々をヒステリックにしてしまう過程、つまり、想像や妄想による思い込みが現実を動かしてしまうという社会現象への考察は、非常に精緻です。

魔女狩りについて知らない人にも良いガイドブックですが、魔女狩りについて詳しいぞ、という方にとってもさらに思索を深められるという意味でも、是非読んで欲しい一冊です。


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2015年01月06日

『釈迦とイエス 真理は一つ』三田 誠広



以前、三田氏の『ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡』(祥伝社新書)を読み、非常に面白い比較をされていたので、今回も期待して本書を購入しました。

結論を先に書いてしまうと、少々がっかりしました。

釈迦とイエスそれぞれの思想ができあがるまでの時代背景の解説と両人の人生についての解説は非常に分かり易かったのですが、それぞれの思想の解説に入ると、既存の解説本のキュレーション的な内容で物足りませんでした。

それでも、釈迦入門、あるいはイエス入門としては、押さえるべき所は押さえた、とも言える基礎的な解釈は丁寧になされているので、仏教やキリスト教の初心者には読みやすいかもしれません。

ただ、既にある程度仏教やキリスト教については知っている、という読者には物足りないでしょう。

もっと、著者ならではの鋭い深読みで驚かせて欲しかったという印象が残りました。

また、もう一つの物足りなさは、最終章に釈迦とイエスの思想をどうやって現代に活かすか、という内容がありますが、そこでグローバリズムの悪質な部分を明らかにしたところまでは共感したのですが、それに対する姿勢として、「ほどほど」やら「隣人愛」やらが出てきたのでがっかりです。

つまり貧しくても不幸でも、考え方を変えて現状で満足しましょうと。欲を無くしましょうと。もう、成長をやめましょうと。

ちょっと左翼がでちゃいましたかね。

それでは外交の上でも経済の上でも、日本に発展途上国に戻れと言っている様なものです。

従いまして、最終章(第5章)以外はお勧めです。


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2015年01月05日

『「フルベッキ写真」の暗号』斎藤 充功



大変面白く、読み始めたら途中で止められない歴史ミステリーものでした。

歴史好きな人、特に幕末史が好きな人達の間では有名な「フルベッキ写真」という、不思議な写真があります。

一組の西洋人の親子と、それを囲む44人の若き侍たち。

この写真には幕末から明治維新にかけて活躍した英傑達の若き日の姿が映されていると言われてきました。

西郷隆盛、大久保利通、中岡慎太郎、坂本龍馬、伊藤博文…。

しかしそのような写真を撮影することが可能だったのでしょうか。歴史研究家たちや推理作家たち、あるいは在野の研究家たちは様々な推理や検証を行い、この写真の謎に迫りました。

しかし謎は深まるばかりです。そして謎が深まった頂点に、この写真にはさらに大いなる謎の人物が写っているとの説が流布します。

それこそ、後の明治天皇となったとされる大室寅之祐なる人物が写っているという説です。

この謎は、明治天皇が孝明天皇の子息では無いという替え玉説、そして孝明天皇は伊藤博文に暗殺されたという説、そして現代の天皇は実は北朝では無く南朝であるなどなど…。

確かに私も以前から不思議に思っている事実がありました。

それは皇居に楠木正成の像があることでした。

「北朝にとっての朝敵である楠木正成が何故ここに?」

本書は伊藤博文を暗殺した(実はそれも怪しいことが本書で分かりますが)安重根が処刑される前に語った伊藤博文の罪についての謎解きのために、著者が自らハルビン駅を訪れるところから謎解きの旅が始まります。

長い旅ですが、あっという間に読めてしまいます。

あまりに急いで読んでしまったため、どのように謎が解かれていったのかを忘れてしまい、もう一度読まねばならなくなっている状況です。

幕末の歴史に興味が有る方、天皇家の謎に興味がある方、歴史小説が好きな方、ミステリーが好きな方──本書は眠れない夜を保証してくれることでしょう。


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2015年01月04日

『新史論/書き替えられた古代史 3 聖徳太子と物部氏の正体』関 裕二



関裕二氏の歴史解釈は大変ユニークであり面白いと常々感じております。

暫く同氏の著書から遠ざかっておりましたが、今回は聖徳太子に関するテーマということで久しぶりに購読してみました。

実は聖徳太子について、将来調べたいことがあったので、ヒントが有るのでは無いかと期待したのです。

しかし結果は残念でした。本書では聖徳太子の話はほとんど出てきません。聖徳太子を語るための前振りが、異常に長くなってしまい、結果的にそちらがメインテーマとなっており、聖徳太子については数ページで片付けてしまっていました。

確かに本シリーズの中で本書は、ヤマト建国から6世紀までの歴史を語ることが課せられた位置づけですから、シリーズ全体の中では至極まっとうな記述内容となっているのだと思われます。

しかし本のタイトルに「聖徳太子と物部氏の正体」と書かれている以上、やはりその部分に期待してしまいます。

古墳時代、物部氏と蘇我氏、雄略天皇や継体天皇あたりについて詳しく知りたい、という人には面白い本です。

ただ、私の様に、タイトルの「聖徳太子と物部氏の正体」に惹かれて購入してしまうと、がっかりします。


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2015年01月02日

『マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実』三橋 貴明



単行本で300ページを超える厚みのある本です。

福島第一原子力発電所の事故直後、様々なニュースから「原発は恐ろしい」と感じ、しばらくはブログでも原発を無くすべきであると言う記事を投稿していました。

しかし、記事を書くためにいろいろと調べるほど、「はて、本当に脱原発は正しいのか?」と疑問に思わざるを得ない情報が出てくるのです。

そのため、私のブログでもだんだんと脱原発色が薄れ、逆に原発は必要だと考えるように変わってきました。

本書は、私の様に、脱原発運動に少しでも疑問を持たれた方には、モヤモヤとした霧を一気に晴らしてくれる本となります。

著者の三橋貴明氏は徹底的に客観的な情報と現実を分析調査し、現在の日本国民の多くが陥っている電力に関する都市伝説を打ち砕いてくれます。

そのため、本書ではまず、マスコミの情報操作からの洗脳を解くために、かなり基礎的な電力関連知識の解説から始められます。

その知識を得た上で、「脱原発」論者達の主張が、ますます日本国民を危険にさらし、国家経済を弱体化させるという構造について、それこそ渾身の筆力をもって説明していきます。

私たちは、再生可能エネルギー政策の欺瞞や、電力自由化の陥穽に気付かなければなりません。

世論ほど当てにならないものはない、ということを、今回も三橋氏に気付かされました。

本書執筆に辺り、著者は日本中の原発を取材しておりますが、そのバイタリティにも敬服します。(当方も取材で原子力開発に係わる関係者の何人かにお話しを伺いましたが、彼らの日々の努力と研鑽には敬服しました)

なお、後書きは気鋭の評論家である中野剛志氏で、この後書き『「三橋貴明」試論」も読み応えがあります。

日本の電力政策が危機に陥っていることを知るためには必読の書ですが、脱原発論者にこそ、本書に反論するために読んで欲しい一冊です。


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