非常に好奇心を揺さぶる本でした。
私がカトリック教会から異端とされたカタリ派に強く惹かれたきっかけは、ずいぶん前ですが、以下の小説を読んだことがきっかけでした。
『旅涯ての地〈上〉〈下〉』はマルコポーロの足取りも辿るスケールの大きさに舌を巻きましたし、『聖灰の暗号〈上〉〈下〉』では、カトリック教会から異端として殲滅されたカタリ派の真実を現代人が探るミステリー仕立てに酔いしれました。
これら両作品によって、カトリックよりも真摯に、また純粋にキリスト教徒として生きたことで、カトリック教会の目の敵となり、異端と決めつけられて火あぶりにされて殲滅された人々の、清冽な信仰と生き方に、とても惹き付けられたのです。
それ以来、長い年月の間、忘れてしまっていたその時の感動が、書店で本書『カタリ派: ヨーロッパ最大の異端』を見つけたときに一気に蘇ったのでした。
当然、すぐに購入し呼んだのです。
カタリ派とはどのような信仰と暮らしをしていたのかが本書には書かれています。
丁寧に分かり易く書かれていますが、少しはキリスト教の知識が必要かもしれません。カトリックによるキリスト教の知識でも十分です。
カトリックを知っていれば、却って本書は理解し易いでしょう。
本書を読んで発見したのは、カタリ派は、私が想像していた以上に一時は組織立った活動をしていたことと、想像していた以上に広い地域に亘って信者が増えた時期が有ったと言うことでした。
それにしても、カトリック教会の残忍さは、教会には悪魔が住んでいることを確信できるほどです。
このカトリックの容赦のなさは、カタリ派のキリスト教としての清貧さを一層際立たせます。
カトリック教会によって殲滅させられたキリスト者たちはカタリ派だけではありませんが、その殲滅の規模でいえば、やはりカタリ派は代表的な異端です。
もちろん、異端とはカトリック教会用語であり、イエスの精神から見れば、恐らくカタリ派よりカトリックこそが異端の中の異端ではないでしょうか。
──と書いてきましたが、私はカタリ派に確かに強く惹かれていますが、カトリックを今更に糾弾するものではありません。
教義としては滅茶苦茶だと思っておりますが、数多くの素晴らしい芸術を生み出してきましたし、現在でも世界の多くの人々を、その信仰の拠り所となって救っているからです。
また、時代と共に妥協点を見出しながら、ある程度の柔軟性を持っていることも評価しています。
どちらが善でどちらが悪か、といった話しでは無く、キリスト教の歴史にはこの様な面もあったのだということを知るためには、本書は良き入門書だと思います。