読み終えてからずいぶん放置してしまいましたので、内容を大分忘れてしまっています。一体何のための読書だったのか、とも自省しますが、忘れることをあまり気にしていては楽しい読書はできないので、ある程度は忘却は仕方ないと諦めるこの頃です。
さて、本書の内容を忘れてしまったのは、私の記憶力の問題だけでは無いと思っています。
つまり、本書がタイトルほどのインパクトが無かったということです。
書かれていることは納得出来ることが多かったと記憶しているのですが、もっと現政権の経済政策のお粗末さについて、ケインズ的視点からぐいぐい批判して欲しかったという期待があったのかもしれません。
逆に言えば本書は、バランス良く書かれているのだとも言えそうです。
まず、この30年ほどに世界で行われた経済政策がことごとく失敗していることを紹介します。特に小さな政府への失敗ですね。
次にソ連型経済の失敗や福島第一原発事故の失敗などを、誰が判断と政策の権限をもっていたのかということに着目して分析します。
そしてハイエクについて、単に自由主義の巨匠だから悪だ、というわけではなく、現在の経済政策にも役立つ主張をしていたのだというあまり知られていない部分に光りを当てています。
次にケインズを批判した経済学者の主張を紹介し、ゲーム理論を活用して日本型雇用などが終焉を迎えた理由を探ります。
そしていよいよケインズによる不況脱出の経済政策を紹介し、何故、今ケインズなのかについて最もページ数を割いて解説します。ここはケインズ支持派の私としては期待していたところです。
最後に福祉社会のあり方について終わるのですが、この終わり方はなんだか良く分かりませんでした。
全体的に、読みやすく親しみ安い文体で書かれていますが、実は下知識が無いと理解しにくい理論展開もあり、印象ほど平易な本ではありません。
経済学入門者には、実は向いていない本だと感じました。