2015年12月14日

『東大医学部生だけが知る 超・知的生産法』岩波 邦明



期待して購入しましたが、はっきり言って期待外れの内容でした。

第一章で、集中力を妨げるゲームなどの誘惑的なものは、2時間までにするといった制限よりも、いっそ全くやめてしまう「遮断」こそ効果がある、という考え方には共感しましたが、本書で役に立ったと言うより、既に実践していて共感できたのはここだけでした。

あとは、日常の小さな無駄をなくして塵も積もれば方式で勉強などのための時間を捻出するのだ、という心がけの問題や、気持ちのもちかたというよりは遠回しに語られた根性論だと受け取れます。

正直、無理矢理に本一冊分(それも薄いですが)のボリュームにするために、小手先の時間捻出のための小細工を集めまくった、という印象を受けてしまう内容でした。

そして、学習なり創作なりをするために、こんなせせこましい、はっきり申し上げて貧乏くさいちまちました心がけをせねばならないのかと、がっかりします。

知的生産を、全く楽しめない本です。

また、文章も機械的で味気なく、読後に何も残らない本でした。

知的生産を楽しむのであれば、他の本を当たった方が良いでしょう。


posted by しげぞう at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月11日

『賢者の戦略』手嶋 龍一, 佐藤 優



既にシリーズ化している手嶋龍一氏と佐藤優氏の国際情勢を語り合う対談ものです。

私は基本的に対談物はあまり好まないのですが、このシリーズは楽しみにしております。

両氏の対談を読むと、現在の国際情勢が見えてくる、といったレベルでは無く、余りに自分が無知で洞察力のかけらも備えていないことに悲しくはなるのですが、同時にマスコミの洞察力もどうよ、と気付かせてくれます。

今回はウクライナ問題が、一地域の問題では無いことを解説することから始まり、やはり現在話題のイスラム国と近代国家の違いや米・イランの関係への影響について語り合います。

その後、東アジアの現状がいかに危険なパワーゲームにあるかを語り合い、その下地を作った後で、集団的自衛権について考察します。

特に、同盟関係が戦争をもたらすという因果関係には、はっとさせられました。

最後の章ではインテリジェンスのあり方について語り合うのですが、印象的な対話があります。

手嶋:国家のインテリジェンスが携わる者が決して忘れてはいけないものとは何かを話し合ってみましょう。

佐藤:ひとことでお答えします。それは「愛国心」です。

私は感動しました。国家権力によって無実の罪(だと思う)で逮捕された佐藤氏が「愛国心」を語ることの重みに感じ入ったのです。

そして、佐藤氏が逮捕されたとき、ロシアやイスラエル、韓国他からインテリジェンス・オフィサーとしてスカウトされたという裏話とその引き抜きで提示される相場についての話しも興味深いです。

そして毎度のことですが、両氏の対談を読む度に、現在を知るにはどれほどの歴史に関する教養が必要であるか、ということを思い知らされます。

また、政治や経済、地政学だけでなく、宗教に対する教養も無ければ、多様な文化と利害関係が絡み合っている国際情勢を読み解くことは無理だなぁ、と思わされます。

インテリジェンスを持ち合わせていない私としては、既に次の対談が楽しみになっています。
posted by しげぞう at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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