2009年06月28日

『MISSING』本多 孝好



このような短編集が好きです。

以前読んだことがあるものでは、浅田次郎の『見知らぬ妻へ』というのが割と似ているかもしれないと、記憶しています。

要するに、生きることに不器用な人間が、その不器用さ故に、平凡なはずの日常にさざ波立ててしまう──そんな様子を描いたような短編集です。

まだ若い作者で、しかもこれがデビュー作というのは、驚きました。

文章が上手なのは当たり前として、登場人物の会話のセンスの良さ、短編ならではの無駄のないプロット、そして結末の意外性。

いずれの短編も味わい深く作り上げています。

「このミステリーがすごい!2000年版」で取り上げられたためか、カテゴリーとしてはミステリーに分類されているようですが、全くミステリーではありません。

ただ、プロットの作り方や、話の運び方などは、ミステリーの技巧が使われているため、ミステリー好きな方にも面白く読めるのではないでしょうか。

どの短編も、読後は切なくなりました。

物語も登場人物も、決して過激さや残忍さ、凶悪さをもっておらず、むしろ穏やかに淡々と物語は進みます。

しかし、むしろその穏やかさの中に、人間が内面に抱える残忍さが垣間見えたりもします。

全体を通したテーマは、見事にタイトルの「MISSING」となっていることも見事です。

いずれの物語にも、何か足りない、無くしてしまっている、そんな人物が登場します。

そしてその足りないものは、もしかすると読者も忘れていたものかもしれませんよ、と問いかけてくるような短編集でした。
posted by しげぞう at 10:50| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ああいいなあ、余韻がいいなあって思えました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
Posted by 藍色 at 2011年10月07日 18:03
藍色さん、コメントとトラックバックありがとうございます。

こちらからもトラックバックさせていただきました。うまくいったかな?

でのこの短編集。すてきな物語が描かれていますよね。

本当は小説が大好きなのですが、最近はこの国の政治・経済がだめだめなため、そちら系の本を読むのに忙しくなっています。

危機感なのですね。
Posted by 管理人 at 2011年10月07日 23:30
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「MISSING」本多孝好
Excerpt: 「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!繊細な視線で描かれた物語が、心の奥底に潜むミステリアスな風景を呼び覚ます…。第16回小説推理新人賞受賞作「眠りの海」ほか「祈灯」「蝉の証」「瑠璃.....
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2011-10-07 17:46
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