2011年06月10日

『減税論―「増税やむなし」のデタラメ』河村たかし



著者の河村たかし氏はご存じ名古屋の名物市長です。と同時に減税日本の代表です。

彼が名物市長であることは、その快活な言動やテレビ受けするキャラクターに負うところもあるのかと思いますが、何より、その信念である、「減税」こそが日本を救う、ということを名古屋市政において、具体的に実践し、一部の成果を上げて見せた実行力にあるのでしょう。

河村たかし氏は、本当に市民税を10%減税しただけではなく、水道料金や国民健康保険料も値下げしてみせました。また、癌検診を一律500円にして、ワンコイン癌検診を実施してみせてもいます。

その結果、世間(特にマスコミ)が言うように、減税により名古屋市は破綻したのか、というと、これがそのようなことはおきず、減税したことにより行政改革が進み、公共サービスをより充実させることを実現しています。

つまり、彼は机上の空論ではなく、実際の行動と政策をもって、「減税」こそが人々(この場合は市民)を豊かにするのだ、ということを示した人物です。

そこにこそ、河村たかし氏が名物市長となった所以があるのでしょう。

この本では「まえがき」きでいきなり以下の様に切り込みます。

──「日本は財政危機だ。だから増税しないと日本は破綻する」という国会議員や経済学者がいまだに多いのにはびっくりする。本当に財政危機なら、なぜ衆参合わせて総工費約1700億円もかけて立派な議員会館を作れたのだろうか。なぜ国会議員の歳費(給料)は、月収129万4000円とたかいままなのだろうかと。──

この本は全く当たり前の疑問から始まります。昨今ではようやく、マスコミに騙されて「日本が財政破綻する」などと信じている国民が少なくなりつつあるのだとは思いますが、相変わらず大多数の国民は、経済音痴ゆえに、政府(財務省)やマスコミ(マスゴミ)、そして経済無知のオピニオンリーダー達に騙されている純朴な人々なのではないかと思います。

政府・マスコミは、この日本人の無知と純朴さを悪用しており、私の周りでも「財政破綻させないためにも増税はやむを得ない」といった素朴な(そして経済無知な)意見を口にするひとが居ます。

河村たかし氏は「まえがき」で宣戦布告します。

──「日本は財政危機だから消費税が10%」になるのも仕方がない」と思っている国民のみなさんは、政府や財務省、その情報を垂れ流すだけの一部マスコミに騙されているとしか言いようがない。そうではなくて、増税こそが、日本を破綻させてしまうということをこの本で明らかにしたい。──

そして私も常々しつこいほど自分のブログなどで訴えている、「国債は国民の借金などではない。」ということから本文が始まります。

まさに正論を述べ、しかも名古屋での実践経験を元に、説得力のある「増税批判」を行っています。

文体も砕けていて(ときどき名古屋弁)読みやすく、経済理論についても、非常に分かり易い喩えを用いて説明していますので、これまで「財政破綻」や「増税やむなし」を当然だと思い込まされている人にとっても、すーっと、腑に落ちる語り口で洗脳から解き放たれることでしょう。

さらに明快にしてくれているのは、なぜ、政治家やマスコミが財務省の言いなりで「増税やむなし」論を語り、国民を洗脳しようとしているか、ということの理由についてです。

また、財務官僚がむきになって増税を行おうとするその理由についても、「あ、そうだったのか。」と目から鱗が落ちる様な説明がされています。

ただ、さらっと語ってしまっておりますので、読み終わった後で思い出せないかもしれません。ここは重要なところです。

このように、非常に明快に、日本にはびこる「増税やむなし」論を論破している本ですが、欲を言えば、よりマクロ経済的な説明や、金融工学的、あるいは国家規模での有効需要に踏み込んだ説明がされているとよかったと惜しまれます。

また、どうしても市政レベルでの話が多くなってしまうのは市長であることから仕方ないのですが、より国家レベルでの国民の安全保証と有効需要を両立できる公共投資や、政府が赤字をつくると国民の資産が増える仕組みや、あるいは国防と経済に関する意見も聞いてみたいところです。

ともかく、「増税やむなし」論に洗脳されているかもしれない、と気になった人は、すぐに読んでみる価値があると思います。




posted by しげぞう at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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