本書の著者は、このたびの福島第1原発の事故を前年に予告していた書として注目を集めた『原子炉時限爆弾』の著者である広瀬隆氏です。
福島第1原発の事故を受けて、緊急出版されました。
福島第1原発が自らの予告通りに事故を起こしたことに対し、その間専門家たちは何をしていたのか、政府は何をしていたのか、と憤りを持ちながらも、さらに冷静なる日本の原子力発電事情を分析していきます。
ノストラダムスの大予言も、ヨハネの黙示録も怖くはないですが、この『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』は恐怖と闘いながら読まねばなりません。
ページをめくる度に背筋を寒気が走ります。
それほど、日本の原子力発電は脆弱であることが分かります。しかも、これまで原子力発電所の事故が起きなかったのは、あまりに幸運な短い期間であったことも分かります。
しかしこれからは地震激動期に突入した日本では、それこそ国中にある原子力発電関連設備が、文字通り日本を壊滅させる事態を招く可能性について、著者はその分析結果から冷酷にも予告します。
そして著者は同時に、この予告が、前著の様に実現しないことを切に祈っています。
また著者は憤りを持って語ります。日本の原子力専門家たちは、いったい何をしてきたのかと。そして、原発利権により、いかに国民の命を危険に曝してきたか、また現在もさらなる危険について、嘘で隠蔽していることを指摘します。
さらに政府や電力会社、あるいは学者たちの原発利権を得ているが故の嘘の発表についても、ことごとく指摘していきます。
著者は焦燥感を持って訴えます。我々純朴な日本人が、彼らの嘘を信じているうちに、想像を絶する悲惨な状況に追い込まれようとしていることも。
著者は、まだ若い人や子供たちには、すぐにでも西日本に待避することも主張しています。大げさではありません。この本には、その根拠もきちんと書かれています。だから恐怖を感じるのです。
地震関連の学術的な研究成果を紹介しながら、これからこの国で起きうる原発関連施設の事故についても、その一つ一つの脆弱性を数値で指摘しながら紹介しています。これを読むと、これほど危険な状態について、どうしていままで知らなかったのか、どうして報道されてこなかったのか、という疑問と共に、現在も、これからも知らされることは無いのだという恐ろしさにも気付きます。
読むほどに絶望を感じる本書ですが、広瀬隆氏は、一抹の希望についても触れています。
それは、既にこの国が原子力発電に依存しなくても電力供給を余裕で賄える設備を持っていることです。これについては具体的な数値をグラフ(以下に掲載しました)が示されており、既に原子力発電所というものが電力供給の必要性においては全く無駄な産物だったことが分かります。
すなわち、原子力発電は、必要に迫られて作られた物ではなく、利権によって作られた物であるということです。
嘘で固めた政府発表、電力会社の理屈、マスコミの報道から身を守るためにも、全国民、必読の書です。
ただ、被災地の方々には衝撃が強すぎるかもしれません。福島第1原発から200キロ以上離れた地に住む私ですら、被曝を覚悟しましたから。
【発電施設の設備容量と最大電力の推移】

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私たちは皆、このたびの福島第1原発事故が起きるまで、原子力発電というものにあまりに無関心でした。また、原子力発電所が設置された自治体の人々が、金に惑わされたことは責められません。何しろ「絶対に安全だ」と言われつづけたのですから、騙された方が悪いのではなく、やはり騙した方が悪いのです。
ただ、このたびの事故で、日本人の多くがようやく原子力発電所の危険さに気づいたのだとすれば、この事故を無駄にしないにはどうすれば良いのか、考え始めたかもしれません。
未だに政府や原子力関係機関から他の原子力発電所は安全だとか、現在でも放射線に関する情報操作が行われています。
我々は注意せねばなりません。