2013年11月21日

『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』惠谷 治



本書のカバーに巻かれた帯に、

「北朝鮮国民も必読の1冊」

と書かれているのはブラック・ユーモアでしょうか。

北朝鮮関係の本は多く出ていますが、本書の特徴は、タイトル通り、北朝鮮が崩壊することが前提で書かれていることです。

ただし、本書で言うところの北朝鮮の崩壊とは、金正恩政権の崩壊を示します。

そしてその崩壊のシナリオは複数用意されております。

・金正恩暗殺による政権交代
・軍事クーデターによる政権転覆
・民衆蜂起を契機とした政権崩壊
・韓国の左翼政権の再登場で「連邦制」による朝鮮統一
・中国人民解放軍の進出
・米韓軍による北進・占領

これらの可能性を検証し、著者が可能性が高いとみたシナリオについてはより具体的なシミュレーションを行ってみるという内容です。

著者は正直に、北朝鮮がこれからどのようなシナリオを辿るかの予想は困難だと述べます。それは、北朝鮮の内部状況だけでなく、それを取り巻く中国、韓国、米国などの変数もあるからです。

それでも著者が確信しているのは、金正恩政権の崩壊です。

そのことを前提に非常に多くの情報(北朝鮮有力者たちの権力構造や兵器の威力など)を集めながら、北朝鮮が崩壊していく様を予想していくところは、所謂戦争シミュレーション小説を読んでいるかのような臨場感があります。

前書きでは、どうやら金正恩が権力に目覚めたらしいことを示すシグナルを読み解くことから始まります。

第1章では、民衆蜂起の可能性を検証します。

第2章では、軍事クーデターの可能性を検証します。

第3章では、金正恩が核兵器開発に注ぐ執念を垣間見ます。

第4章では、米韓との軍事衝突の可能性を検証します。

第5章では、朝鮮半島で有事が発生した際、日本はどうするべきなのかについて考察します。

後書きでは、仮に南北が統一された際、何が起きうるのかについて暗示して終わります。

何かと目立つ隣国で有りながら、ベールに包まれた北朝鮮の現在を知るための、緊迫感のあるガイド本と言えます。


posted by しげぞう at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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