前回読んだ『書いて生きていく プロ文章論』が大変面白かったので、引き続き同じ著者である上阪徹氏の著書を読みました。
Amazonのレビューでは酷評と絶賛が半々となっておりましたが、私の評価は高く付けさせていただきます。
酷評している人の指摘は、自慢話ばかりで肝心のノウハウが書かれていない、ということと、文章が下手ということですが、彼らはいったい何を読んだのでしょうか。
確かに冒頭で著者が「ブックライター」という職業のおかげで同年代のサラリーマンの数倍の収入(15年で4億円以上の売り上げ)を得ていることや、高級住宅街に住んでいること、外車を2台所有し、取材時のスーツはアルマーニで有ることなどが述べられていますが、これらは著者がいかにハードワークに耐え、信頼を勝ち取り、仕事の効率を高める工夫を怠らず、品質の高い仕事をキープしてきたかということの結果でしかないことがきちんと書かれています。
つまり著者は、「ゴーストライター」の社会的地位を高めるために「ブックライター」という職業名を提唱していることからも、まずは本としてキャッチーな分かり易い成功談から書き始めたに過ぎません。
しかも「ノウハウがない」と批判している人は冒頭の著者の生活振りに嫉妬してしまったためか、その後しっかりと高品質の本を大量に効率良く執筆し続ける著者のノウハウがぎっしりと詰まっていることに気付かなかったのでしょうか。
本でなくとも、ビジネス文書にも十分役立つノウハウがてんこ盛りの本です。いや、仕事術の本としても役立ちます。
また「文章が下手」という批判をしている方にも、この本の読みやすさ、分かり易さに接しながら、どうしたら下手だと感じたのかさっぱり理解出来ません。
本書の文章は、流石ベストセラーライターの文章と感じさせるには十分過ぎるほど、読者の目線で分かり易い工夫がされています。
さて、著者が「ゴーストライター」ではなく「ブックライター」であると主張しているのは、あくまで著者はコンテンツを持っている人(この場合、取材を受けた側の人)であり、自分はそのコンテンツを本に印刷できる文章として引き出したに過ぎないからだ、と述べています。
従って、ブックライターの使命と社会的な存在意義は、せっかく社会に役立つコンテンツ(経験、情報、ノウハウ、人生観など)を持っていながら、(技術的に、あるいはスケジュール的に)文章が書けない、という理由で、世の人々の役に立つコンテンツが世の中に出ずに終わらせてしまう人(著名人など)から、コンテンツを引き出して読める形にすることだ、と著者は主張しているのです。
ですから、「ゴーストライター」といった後ろ暗い職業名は辞めるべきであるし、実は実入りの良い仕事であることも世間に公開することで、若い人達に夢を持って欲しいとして執筆したことが良く分かる本です。
ただ、上阪氏は、非常に取材能力に長けている人だと思いますので、誰でも「ブックライター」になれば儲かるとは思えません。
上阪氏が特別に出版業界から信頼・評価されているのは、常に半年先まで執筆予約が埋まってしまっていることからも分かります。
しかも上阪氏はこの仕事を始めてから営業をしたことは一切無いと言います。
それでも上阪氏がただ者ではないのは、どんなに仕事を依頼されても、徹夜はしない、土日は休む、年に2回は家族と海外旅行に出かける、というライフスタイルを維持していることでしょう。
結局、文章を書く上でのノウハウが満載の本ではありましたが、どうしても著者個人の才能が、売れっ子であることの最も大きな理由ではないかと思えてしまう読後感は残りました。
とはいえ、結論としては、文章を書く人には自信を持ってお勧めできる本です。
私には、大変勉強になりました。
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