2014年05月07日

『知の武装: 救国のインテリジェンス』手嶋 龍一, 佐藤 優



本書は手嶋龍一氏と佐藤優氏の対談集です。

テーマは国家の運営に必要なインテリジェンス、すなわち情報を分析する能力についてですが、まず前書きで手嶋龍一氏が定義している文章を引用します。

「インテリジェンスとは、国家の舵取りを委ねられた指導者がその命運を賭けて下す決断の拠り所となる情報を意味する」

鋭利な刃物を定義するような文章です。

そして本書では、このインテリジェンスの具体例として、彼らが対談しながら現在の国際情勢を、僅かな情報を頼りに深読みしてみせるという試みで示していきます。

二人の情報の扱い方は実に大胆かつデリケートです。おお、そんなところまで深読みするのか、と興奮しながら読み進められました。

但し、全ての分析に賛同は出来ませんでした。例えばTPPや沖縄の米軍基地移転問題に対する彼らの読みは少々納得出来ないところが有りました。

しかし、第一章の冒頭から2020年の東京オリンピック決定に至る背景の分析には驚かされましたし、第二章で2013年5月14日に北朝鮮を飯島勲内閣官房参与が訪れたことについて、数枚の写真から実に多くの情報を引き出して見せるところは名探偵の推理が語られている様な快感がありました。

それらの写真は、私などが見れば何の変哲もない新聞紙面に掲載された写真ですが、手嶋氏と佐藤氏にかかるとこれほど多くの情報が読み取れるのかと驚きます。

第三章ではスノーデン元CIA職員、第四章では尖閣問題、第五章ではTPPと、具体的な問題の深層を実際に二人が読み解いて見せます。

そして第六章から八章までは、インテリジェンスが国際社会で国家を運営するためにどれほど必要で、日本の現状はどうであるか、ということが語られます。

ただ、第六章ではインテリジェンスが学んで身に付けられるものではないという残念な結論を突きつけられます。まず、佐藤氏が言います。

「それは理屈で捉えられるものじゃないが、天才の直感によってなら捉えられる」

それを受けて手嶋氏も言います。

「インテリジェンスは、情報機関の研修所で教科書を使って教えられるようなものじゃない」

だからインテリジェンス・オフィサーは養成するのではなく、発見する必要があるという結論になります。

当然、凡人(以下)の私が本書を読んでも、インテリジェンスの技能は寸分たりとも向上しません。

それでも、本書を読んで、インテリジェンスのなんたるかが少しでも分かれば、世界の見え方が変わってきそうな気がしました。


posted by しげぞう at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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