本書では、政治的なあるいは軍事的に米国に依存している日本の国際的な立場を論じているのかと思うとそうではありません。
思想的、学術的に日本が米国から洗脳されているというお話しです(だと思います)。
ただ、私には本書は難しすぎました。私に思想史あるいはその周辺の知識が余りに乏しいため、著者が散漫に思いつくままに論じている日本の(自称?)知識人達への批判が、良く理解出来ませんでした。
もうひとつ本書の読み難さの原因になっているのは、本書が書き下ろしでは無く、これまで著者がネット上で発表した論評や寄稿文など、つまりばらばらに発表された文書の寄せ集めであり、一生懸命編集されたのでしょうが、やはり章や節ごとにまとまりがなく、散漫に散らかされた論評集であることです。
一応、本書のテーマ内には収まっている内容が集められてはいますが、非常に読んでいて疲れました。
さらに文体や言葉使いですが、いつになく大量の傲慢とも思える主張と自分以外の知識人は皆馬鹿であると言う露骨な主張が乱暴すぎるほど繰り返されています。
副島氏の傲慢な文章には慣れていると思っていた自分ですが、本書では流石に氏の品性を疑いかつ辟易してしまいました。
何しろ氏は、猿の惑星(日本のこと)に唯一生まれた知識人であり思想家であると自負しており、そのことばかりがなんども主張されます。
ただ、ポピュリズムとアメリカニズムに関する説明は、目から鱗が落ちる気持ちで読みました。
確かに副島氏は、驚くべき博識さを持っていることが本書からも分かりますから、氏が師と仰ぐ小室直樹氏以外は皆白痴だ、と言いたくなる気持ちも分からなくはありません。
しかし小室直樹氏の本は、もっと品がありました。
ですから、1,600円(税別)で人に売る文章としては、乱暴すぎる本になっています。
ただ、欧米の思想史に詳しい人には面白い本かもしれません。
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