以前、本書の著者である斎藤貴男氏の『消費税のカラクリ』という本を読み、非常に優れたジャーナリストであると感銘したため、本書を購入してみました。
実はタイトルに反発して購入したという、妙な動機もあります。
私は個人的には、日本は「戦争のできる国」になるべきだと考えており、それこそが不要な戦争を回避でき、平和維持に必要だと考えているのですが、敢えて反対意見を主張している斎藤貴男氏の考えを知りたくて読んでみたのです。
感想としては、分かり難い上に、平和ボケしているという少々残念な印象を受けました。
詳細は記しませんが、斎藤貴男氏は、「戦争ができる国=戦争する国」あるいは「戦争ができる日本=米国のポチ」という単純で懐かしいお左翼的な主張を行っています。
しかも本書に書かれた根拠では、当方は説得させられることがありませんでした。
「戦争ができる国=戦争する国」は余りに短絡的な恒等式です。
当方は平和を、「戦争ができない均衡状態」であると考えておりますので、例えば中国から見れば、勝てると分かっている戦争なら仕掛ける可能性がありますが、相手(日本)が手強い武装をしている、あるいは日米同盟が邪魔だ、と判断すれば、リスクがあるため戦争状態を回避するであろうと考えているのです。
この場合、「戦争ができる国=戦争を回避できる国」という仮説を著者は全く検証していません。
また、軍事力的にも憲法解釈的にも非力な日本が、しばらくは米国のポチでいる必然性があるのではないか、ということも当方は考えており、そのことに対する反論も用意されていませんでした。
以上、取材や情報収集には力が入っていましたが、現実的な安全保障をどうするのか、という視点が抜け落ちた様な本だという感想を持ちました。
【関連する記事】
- 『崩れゆく世界 生き延びる知恵』副島 隆彦, 佐藤 優
- 『明治維新という名の洗脳 150年の呪縛はどう始まったのか?』『洗脳経済 150..
- 『日本とユダヤ 聖徳太子の謎』久保 有政
- 『東大医学部生だけが知る 超・知的生産法』岩波 邦明
- 『賢者の戦略』手嶋 龍一, 佐藤 優
- 『移民亡国論: 日本人のための日本国が消える! 』三橋 貴明
- 『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』松尾 匡
- 『未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる』ちきりん
- 『カタリ派: ヨーロッパ最大の異端』アンヌ・ブルノン
- 『知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~』堀 正岳, ま..
- 『平和ボケした日本人のための戦争論』長谷川慶太郎
- 『夢をかなえるゾウ』水野敬也
- 『創価学会と平和主義』佐藤 優
- 『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高 義樹
- 『日本人の99%が知らない戦後洗脳史 嘘で塗固められたレジーム』苫米地 英人
- 『魔女狩り 西欧の三つの近代化』黒川 正剛
- 『釈迦とイエス 真理は一つ』三田 誠広
- 『「フルベッキ写真」の暗号』斎藤 充功
- 『新史論/書き替えられた古代史 3 聖徳太子と物部氏の正体』関 裕二
- 『マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実』三橋 貴明