以前、三田氏の『ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡』(祥伝社新書)を読み、非常に面白い比較をされていたので、今回も期待して本書を購入しました。
結論を先に書いてしまうと、少々がっかりしました。
釈迦とイエスそれぞれの思想ができあがるまでの時代背景の解説と両人の人生についての解説は非常に分かり易かったのですが、それぞれの思想の解説に入ると、既存の解説本のキュレーション的な内容で物足りませんでした。
それでも、釈迦入門、あるいはイエス入門としては、押さえるべき所は押さえた、とも言える基礎的な解釈は丁寧になされているので、仏教やキリスト教の初心者には読みやすいかもしれません。
ただ、既にある程度仏教やキリスト教については知っている、という読者には物足りないでしょう。
もっと、著者ならではの鋭い深読みで驚かせて欲しかったという印象が残りました。
また、もう一つの物足りなさは、最終章に釈迦とイエスの思想をどうやって現代に活かすか、という内容がありますが、そこでグローバリズムの悪質な部分を明らかにしたところまでは共感したのですが、それに対する姿勢として、「ほどほど」やら「隣人愛」やらが出てきたのでがっかりです。
つまり貧しくても不幸でも、考え方を変えて現状で満足しましょうと。欲を無くしましょうと。もう、成長をやめましょうと。
ちょっと左翼がでちゃいましたかね。
それでは外交の上でも経済の上でも、日本に発展途上国に戻れと言っている様なものです。
従いまして、最終章(第5章)以外はお勧めです。
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