魔女狩りについて、非常に良くまとめられた良書です。
猟奇的な内容では無く、魔女狩りがなぜ、伝説や伝承にどっぷり浸かっていた中世では無く、近代黎明期のルネサンスの後のバロック時代に猖獗を極めたのか、という点に注目して書かれています。
しかし魔女狩りについて全く知識の無い読者も想定しているようで、まずは魔女狩りがどの辺りからどのような流れで発生したのか、ということから丁寧に説明されています。
いや、魔女狩りについて知っている読者にとっても、魔女狩りの伏線としてのカタリ派や異端審問、ユダヤ教徒やワルド派に対する偏見などについては、あまり知られていないかもしれません。
第一章では魔女狩りが始まるまでの伏線的時代背景について解説され、第二章で魔女狩りが始まった際に、ヨーロッパでどのようにして魔女像が共有されていったかについて説明されます。
第三章では、魔女狩りが猖獗を極めたバロック時代の魔女や女性に対する偏見が浮き彫りにされます。
そして第四章で魔女狩りがどのように終焉を迎え、ヨーロッパが近代化を始めたかが語られます。
本書の特筆すべき部分は、魔女狩りの始まりから終わりまでを俯瞰するについて、三つの視点から解釈を試みているところです。
3つの視点とは、「視覚を中心とする感覚の近代化」「自然認識の変容と近代化」「他者・社会的周縁者の排除と近代化」です。
特に視覚による魔女の物語が言説化し、ヨーロッパの人々をヒステリックにしてしまう過程、つまり、想像や妄想による思い込みが現実を動かしてしまうという社会現象への考察は、非常に精緻です。
魔女狩りについて知らない人にも良いガイドブックですが、魔女狩りについて詳しいぞ、という方にとってもさらに思索を深められるという意味でも、是非読んで欲しい一冊です。
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